雑誌やネットの記事の中で、「日本の将来に対して不安だから子供はつくらない」というような意見を目にすることがあります。高齢化社会、年金問題、環境破壊など不安をあおる記事はいくらでも目にします。確かに、日本が過去と比べて経済的に拡大しているとは言えない時代であり、今後もその状況が逆転することは予想できません。給料も減少傾向を続け、残業時間も増えて、子育てにはお金がかかる一方、年金も将来どうなるか分からないし、地球温暖化や気候変動、大規模天災で日常生活が脅かされるリスクも高まっている・・・などと考えると、「結婚しても子供はつくらない」という気持ちも分かります。
しかしながら、私自身は日本の将来に対しては悲観していません。それは、下記の論文にあるこの言葉がきっかけとなりました。

 暗黒時代というのは、直線的進歩を信じる近代人が中世を軽蔑して使った言葉だから、あまり良いイメージを喚起しないが、良いように表現するならば、安定した時代であるということになる。
  永井俊哉ドットコム「植物型情報システムの時代」

私自身が、将来に対して抱く不安というものは過去の基準と比較してどうかという問題です。例えば、収入は幸福を示すひとつの基準ですが、それが全てではありません。右肩上がりの経済成長を基準に考えれば、金銭的な面での将来の不安は大きくなるばかりです。子供の教育費についても、「大卒までは親が費用を工面する」という考えに疑いを持つだけで、世界が全く変わります。多くの情報は過去を基準とした比較で将来を予想しますが、将来、その基準自体が意味のないものになる可能性もあります。
一般的に「昔は良かった」と過去を懐かしむのは、脳内で過去の悪い出来事を小さくするという人間のストレスに対する防衛反応らしいです。
将来を悲観する前に、その悲観のもとになる基準自体を疑うという発想を持つことが、子供が前向きな将来を描くきっかけとなると思っています。



市場原理は至上原理か
永井俊哉
Nagai, Toshiya
2016-03-05